すりについて
すりを題材にした小説というのは少ないように見えて案外多いのではないかと考える。
不安定な収入、行為自体も目標に直接的な危害を加える事はないので軽い描写で済む、そして人の服から手際よく財布や金品を盗むためシャープなイメージが付きまとう、あげればキリがないですが大まかにはこれくらいでしょうか。
ちょっと影のある雰囲気だけどそこまで存在感に溢れた風貌ではないからどこでも溶けこむことができます。それゆえ色々と動かしやすい。というのがすり小説の主人公の印象です。
というわけで中村文則氏作の「掏摸」を読みました。
綾野剛さんが絶賛と聞いて読み始めたのですが非常に軽快な作風であっさりと読めました。大抵こういう犯罪者を扱った読み物って「それまで罪を犯してきた自分の変化」をラストに持ってくるのですが例に漏れずその描写がありましたね、そしてその影響を及ぼした人への脅しもテンプレ通りでした。
駆け足で読んで展開を整理できてないのでもう一回読んでみます。
余談ですが同じ盗みでも怪盗とは逆を行きますね、予告状を出してあらかじめ知らせておいてハードルを上げていって結局盗みを成功させてしまう華やかさはスリにはありません。ただターゲットを定めて、予告状なんてそんなもの作らず、知らせず、ひっそりと盗む。そこにあるのは名誉などではなく実力を試したいという驕りか、日々の生活をどうにかしていきたいという焦りか…。
盗みを題材にした小説というのも、これからみるのもいいですね。